日経ホームビルダー4月号では、全ての照明器具にLED照明を採用した戸建て住宅の事例を掲載した。ここでは、その一部を紹介する。

 使用したLED照明器具は約100灯で、白熱電球などの照明器具は1灯もない――。すべての照明器具をLEDにした戸建て住宅が2009年3月、広島県東広島市に完成した。実験ではなく、一般の建て主から受注した住宅だ。

戸建て住宅に設置したLED照明と施工中の様子。照明器具の配置などに注意は必要だが、施工は一般的な照明器具の場合とほとんど変わらない(写真:フロンティア・サンワ)

 建て主がLED照明を導入した理由は、省エネルギー効果を期待しただけではない。同居する親が高齢だったこともあり、高齢者には負担となる電球交換の手間を減らしたかったからだ。

 LED照明の定格寿命は一般的に白熱電球の約40倍で、約10年は交換の必要がない。この住宅の導入コストは、従来の照明器具を設置した場合と比べて、約10倍に当たる250万円程度。建て主はコストよりも利便性を選んだ。

従来の照明器具を導入した場合とLEDを導入した場合の比較(東広島の住宅の場合)
従来の照明器具 LED照明器具
消費電力(1日当たり) 16.382kwh 3.175kwh
CO2排出量(1日当たり) 9.092kg 1.762kg
ランプコスト(10年で必要なランプ交換費用) 24万2964円 0円
照明器具の導入コスト 約25万円 約250万円
1日8時間点灯した状況で計算。実際には使用場所によるランプの違いによりコストは異なる。表は、山根木材の資料を元に日経ホームビルダーが作成した(資料:日経ホームビルダー)

 住宅の設計と施工は山根木材(広島市)が担当した。同社にとって、戸建て住宅でLED照明を導入するのは初めての試みだ。そこで、照明の設計と施工は、LED照明の開発企画と販売を手がけるフロンティア・サンワ(広島市)に協力を依頼した。

 フロンティア・サンワLED製品企画部の松本幹也さんは、「LED照明だからといって、特別な設計や施工が必要になるわけではない。ポイントさえ押さえておけば、一般的な照明工事と大きく変わらず導入できる」と話す。

 今回の事例を基に、LED照明を住宅に導入するためのポイントを見ていこう。

光の角度が狭い

 LED照明を導入する際に、まず注意したいのが、照明器具の配置だ。器具によっては、LED照明は従来型の照明器具に比べ、光の広がる角度が狭い。そのため、照明直下を外れると暗く感じてしまう。特に、光の広がり方が狭いLED照明の場合は、壁面に光が反射する効果を期待できない。壁面に光を当てて、明るさを演出したい場合は注意が必要だ。

 この住宅のケースでは、「従来照明と同等の明るさを確保するために、通常では白熱電球1つのところに2つのLED照明器具を設置した」と松本さんは言う。たとえば廊下だ。従来の照明器具のダウンライトなら、幅800mm、高さ2400mm程度の条件の場合、60W程度の照明を2100mm間隔で設置すればよい。これをLED照明で実用的な明かりにするためには、4WのLED照明を、約1200mm間隔で設置する。

廊下やトイレだけでなく、居間や寝室などすべての部屋にLED照明を導入した。その数は、全部で約100灯に上る。一部の照明では、電球型LED照明を使う工夫もした。フロンティア・サンワと山根木材は今後共同で、戸建て住宅向けのLED照明の活用を検討中だ(資料:山根木材)

発熱に注意

 LED照明の施工で盲点となりやすいのが、LEDから発する熱の問題だ。LEDは白熱電球などと異なり、発光面が熱くなることはない。しかし、発光面の裏側は発熱する。この熱を逃がさなければ、LED照明の寿命が短くなる。

 メーカーが販売するLED照明は大抵、独自の放熱設計を施して温度を下げる工夫をしている。だが「その放熱を妨げる施工をしてしまうと、不具合が出てしまいかねない。機器の温度が55度を超えないように施工したい」と松本さんは指摘する。たとえば、ダウンライト型LED照明などの場合、放熱穴と断熱材の距離が、仕様書に従って適切に確保できているかの確認が必要だ。

 可能であれば、「LED照明の施工実績がある専門工事会社に、設置場所などを相談したほうがいい」と松本さんはアドバイスする。

 またLED照明は、交流電流を直流電流に変換するコンバーターを内蔵しているため、従来型の照明器具に比べて重い。施工の不備や下地の強度不足によっては、重みで外れ、脱落する恐れもある。コンバーターと照明本体が別になっているタイプの場合は、コンバーターの設置スペースに対して補強などが必要になる場合もある。これらのポイントは、照明リニューアルでも同じだ。

◆詳しくは、日経ホームビルダー4月号の「使えるニュース」に掲載しています。