東武建設(栃木県日光市)が長野県佐久市内のマンションで鉄筋の一部を切断し、そのまま竣工させていたことがわかった。長野県が3月7日に発表した。

 マンションはアーネストワン(東京都西東京市)が発注し分譲する「サンクレイドル佐久平」で、地上11階・地下1階建ての鉄筋コンクリート造だ。施工者の東武建設は2006年7月に着工し、コンクリート打設の前に換気設備用のスリーブ穴の一部を開け忘れたり、適切に開けなかったりした。打設後のコンクリートをコア抜きして、スリーブ穴の新設と開け直しを行った。その際に鉄筋の一部を切断し、そのままコンクリートを埋め戻して2月8日に竣工させた。

 長野県は2月5日に受信した匿名の電子メールがきっかけで、鉄筋の切断を確認した。2月28日、アーネストワンに対し販売の中止、購入者への状況説明、および施工状況の詳細な検査などを要請した。マンションの49の住戸のうち入居済みが2戸、売約済みが3戸あった。

 東武建設総務部によると、3月12日時点で、打設後に新設したスリーブ穴は26カ所、開け直しは55カ所であることが判明しているが、今後の調査で増えるか減る可能性もある。穴は100~260mm径で、開けた場所は地上1~6階の梁が中心だ。切った鉄筋は主に13mm径のあばら筋で、切断個所の数など詳細はまだわかっていない。

 同社によると、サンクレイドル佐久平の現場監督は50歳代のベテランだったが、うっかりしていたり、監理者などとの意思疎通がうまくできなかったりしてミスを犯した。アーネストワンに対し、建物を買い取って解体したいと申し入れている。解体したい理由を、「建物を補強して構造耐力を回復できたとしても、不動産としての価値は元に戻らない。そのことに責任を感じているからだ」(総務部の担当者)と説明している。

 アーネストワンの岡田慶太社長室長は3月11日、「解体するか補強するか、まだ決めていない」と述べた。5戸の購入者とは契約を解除する方針だ。

 サンクレイドル佐久平はJR長野新幹線佐久平駅の近くにあり、延べ面積は5911m2だ。総工費が約9億円、住戸価格が2340万~3580万円だった。設計・監理はユニゾン建築設計事務所(東京・渋谷)が担当した。