床は傾き、その表面がでこぼこ。球形や円筒形、立方体の部屋が積み重なる――。現代美術家の荒川修作氏がデザインした分譲マンションを動画でお伝えする。

 一時は、着工しないのではないかとのウワサも流れたマンションだが、2005年10月15日に無事、完成した。

 建設場所は東京都三鷹市の住宅街。6車線道路に面する。地上3階建てで、延べ面積は761m2。住戸タイプは2LDKと3LDKの2種類があり、広さは約52~61m2。全部で9戸だ。

 動画・内観1の動画を見ていただくと分かるが、住戸の中央にキッチンとリビングダイニングのスペースがあり、その周りを球形、円筒形、立方体の部屋が取り囲む。シャワーブースは円筒形の部屋にあり、その裏側にトイレの便器がしつらえられている(動画・内観2を参照)。天井は、コンクリート製の躯体がむき出しで、そこに電気配線や金属製フックが取り付く。傾いた床は、さらに表面が波打つ。ここを歩くと足の裏が気持ちよかったりする。

 荒川氏は、デザインの狙いについて、「人間が本来持っていた感覚を呼び起こし、さらには新しい感覚を生み出すことだ」と話す。そして、「感覚を呼び起こすには、体が本当にうまく使える複雑な場が必要だった」とも。

 分譲価格は未定だが、周辺にあるマンションの相場である4000万円の2倍強とする方向で検討中だ。

 荒川氏は、購入希望者向けの内覧会を11月から実施する。内覧会への申し込み先は「荒川修作+マドリン・ギンズ ARCHITECTURAL BODY」のホームページ(下記参照)に掲載されている。

●三鷹天命反転住宅 In memory of Helen Keller
◇所在地=東京都三鷹市
◇敷地面積=452.56m2
◇建築面積=260.61m2
◇延べ面積=761.46m2
◇構造・階数=壁式プレキャストコンクリート造、地上3階
◇発注者・デザイナー=ABRF(荒川修作)
◇設計者=安井建築設計事務所(吉冨聡)
◇監理者=安井建築設計事務所(中山隆行)
◇施工者=竹中工務店(小坂茂訓)
◇施工期間=2004年12月~2005年10月
◇住戸数戸=9戸
◇住戸専有面積=52.38~60.65m2
◇住戸タイプ=2LDK、3LDK
◇分譲価格=未定(2005年10月27日時点)

外観1
外観2・入り口付近
内観1
内観2(トイレはシャワーブースの裏にある)
3階通路から見る
日経アーキテクチュア誌面に掲載した写真の撮影風景