2016年には国内でCLT建築物が竣工ラッシュを迎える。建物の上の階だけを木造にして軽量化と工期短縮を図る、床部分にCLTを導入して基礎工事を軽減するなど、新たな技術開発も加速する。同工法の旗振り役である林野庁の小坂氏は「部分利用によってさらに木造のメリットを出せる」と期待を寄せる。

林野庁林政部木材製品技術室長 小坂善太郎氏
林野庁林政部木材製品技術室長 小坂善太郎氏

床だけに使う、あるいは耐震壁に使う

 これから新たな木材利用需要を創出していくに当たり、様々な取り組みを進めているが、なかでも近年、力を入れているのがCLT(Cross Laminated Timber)の開発である。

 CLTというのは、ひき板を直交させ積層接合した部材である。これまで木材は主に軸材として使っていたが、これを面材として使えるようにしようということだ。ヨーロッパで20年ほど前から使われ始め、10階建てのビルなどもCLTでつくられている。このCLTをわが国でも導入しようということで、林野庁と国土交通省では2014年度から16年度までの3年で整備していこうというロードマップを作成し取り組んでいる。

 とくに来年、2016年度には新たな建築関係基準の整備を予定している。環境整備を行うことによって、一般的な設計法で中高層建築物や部分利用においてCLTが使えるように、技術開発を進めている。

CLTの開発・普及
  • CLTとは、ひき板を積層接着したパネルで、欧州では中高層建築物にも利用。
  • 我が国でも開発・普及を進めており、2013年12月にJAS規格を制定。2014年3月に国内初のCLT建築物が誕生。
  • 2014年11月に、林野庁と国土交通省が共同で、CLTの本格的な普及に向け関係者の取組を促進するため「CLTの普及に向けたロードマップ」を策定・公表。
■CLTの開発・普及
CLTの開発・普及 国産材CLTの強度試験、実大試験体の振動実験等のCLTの開発・普及を国土交通省と連携して推進(写真:林野庁)
CLTの開発・普及 国産材CLTの強度試験、実大試験体の振動実験等のCLTの開発・普及を国土交通省と連携して推進(写真:林野庁)
国産材CLTの強度試験、実大試験体の振動実験等のCLTの開発・普及を国土交通省と連携して推進。
CLTの開発・普及 2014年3月に国内初のCLT建築物が高知県大豊町で誕生。実証を積み重ねつつ、2016年度早期を目途にCLT 建築物の設計方法を確立(写真:林野庁)
CLTの開発・普及 2014年3月に国内初のCLT建築物が高知県大豊町で誕生。実証を積み重ねつつ、2016年度早期を目途にCLT 建築物の設計方法を確立(写真:林野庁)
2014年3月に国内初のCLT建築物が高知県大豊町で誕生。実証を積み重ねつつ、2016年度早期を目途にCLT 建築物の設計方法を確立。
■CLT普及に向けたロードマップ(抄)
CLT普及に向けたロードマップ(抄) 2014年11月11日 林野庁と国交省によるプレスリリースから抜粋。 (注1)許容応力度計算等一般的に使われる比較的簡易な構造計算による設計手法。 (注2)想定される火災で消失する木材の部分を「燃えしろ」といい、燃えしろを想定して部材の断面寸法を考えて設計する手法。 *階段、間仕切り壁等については、現時点において使用可能。屋根等については、基準強度が明らかになれば使用可能(資料:林野庁)
  • 2014年11月11日 林野庁と国交省によるプレスリリースから抜粋。
  • (注1)許容応力度計算等一般的に使われる比較的簡易な構造計算による設計手法。
  • (注2)想定される火災で消失する木材の部分を「燃えしろ」といい、燃えしろを想定して部材の断面寸法を考えて設計する手法。
  • *階段、間仕切り壁等については、現時点において使用可能。屋根等については、基準強度が明らかになれば使用可能。
(写真・資料:林野庁)

 部分利用によってCLTの用途は大きく広がる可能性がある。CLTを床だけに使う、あるいは壁だけに使うという技術も検討が進んでいる。例えば、超高層ビルの床にCLTを使うという技術開発をしている。これまでの鉄筋コンクリートで作った床に比べると、CLTは圧倒的に軽い。このため建物の重量がぐっと減る。そうすると、建物の重量を支える基礎工事を軽減できる。また、軸組構法ではなくパネル工法的に施工できるので、工程の工夫によって工期短縮も可能だ。

 2時間の耐火性能を確保できれば、床については階数制限なく使える。石こうボードを張ることで2時間耐火を確保した大臣認定取得を目指している。おそらく2016年度までには大臣認定を取得できるだろう。

 このほか、超高層建築物の水平力を負担する部材としてCLTを使うことを考えている。CLTを耐震補強部材として使ったり、鉄骨と組み合わせることでビルの制振壁としたりする技術を開発している。水平力を負担する部材は、基本的に耐火性能は問われないので、使用する階数に関係なく、木肌をあらわしにして使える。このような部分利用によって、中高層だけでなく超高層建築物も含めてCLT活用の可能性が広がると考えている。

CLTの可能性について
CLTの可能性について(資料:林野庁)
(写真・資料:林野庁)