限られた公共交通、自家用車での移動、建物内部はセントラル式の空調で全館均一な温度――。米国は2008年にオバマ大統領が「グリーン・ニューディール政策」を打ち出すなど、環境への取り組みが盛んになっているが、“エネルギー消費社会”というイメージを完全に拭い去るのに時間がかかっている。

 今回紹介するマサチューセッツ州グリーンフィールドにある「The John W Olver Transit Center (OTC)」は、そんなイメージの払拭に一役買うことになるかもしれない。

OTCの建物名称となっているJohn Walter Olverは、マサチューセッツ州で20年以上に渡り民主党議員として活躍した人物の名前。マサチューセッツ工科大学(MIT)で化学の博士号を取得した経歴を持つ(写真:Peter Vanderwarker Photography)
OTCの建物名称となっているJohn Walter Olverは、マサチューセッツ州で20年以上に渡り民主党議員として活躍した人物の名前。マサチューセッツ工科大学(MIT)で化学の博士号を取得した経歴を持つ(写真:Peter Vanderwarker Photography)

 2012年に完成したOTCは、路線バスのターミナルであり、市内の補助的な交通手段やタクシーの共同駅となっている。後年には鉄道駅とも連絡する予定だ。一帯の公共交通を提供しているフランクリン地方交通局の事務所も併設している。

 設計は、Charles Rose Architect。ハーバード大学のデザイン・スクール出身の若手建築家で、テクスチャーを大切にした素材感とシンプルなディテールが特徴的だ。

耐候性鋼材にクオーツ色の亜鉛塗装をしたクラディング、銅製のスクリーンなど、表情を豊かにしている(写真:Peter Vanderwarker Photography)
耐候性鋼材にクオーツ色の亜鉛塗装をしたクラディング、銅製のスクリーンなど、表情を豊かにしている(写真:Peter Vanderwarker Photography)