2014年9月、不思議な形をした2つの温室が完成した。クラッカーから飛び出す無数の紙テープが着水した軌跡のような形状――。これは、お酒のジン「ボンベイ・サファイア」の蒸留所とその付帯施設である。

「ボンベイ・サファイア」の蒸留所と温室の外観(写真:Iwan Baan)
「ボンベイ・サファイア」の蒸留所と温室の外観(写真:Iwan Baan)

 英国ハンプシャー州のテスト川沿いにあるボンベイ・サファイアの蒸留所は、かつては紙幣用の紙を作る製紙工場だった。敷地には49棟もの建物が集落のように集まって建っており、この十数年ほどは廃墟と化していたという。

 2010年上海万博の英国パビリオンやガーデン・ブリッジなど、奇抜なデザインで注目されているヘザーウィック・スタジオが、今回の蒸留所増築の設計者に選定され、既存の49棟のうち23棟を選び改修することになった。テスト川のほとりに蒸留所、ビジターセンター、温室を配している。

 保存された23棟の中でも、歴史的建造物の「グレードII」に登録されている3棟の赤レンガの建物のうち2棟には、それぞれ2基の蒸留機を配置し、年間2500万リットルのジンを生産する蒸留施設となった。

複数の建物の間にはテスト川が流れている(写真:Iwan Baan)
複数の建物の間にはテスト川が流れている(写真:Iwan Baan)