外壁の反射光も問題に

 ある行為が周囲に被害を与えても、一般に許容されている範囲なら不法行為とはいえない。しかし周囲への被害が一定の限度を超える場合は、周囲に被害が及ばないように配慮する必要が生じる。受忍限度を超えると判断されれば、「不法行為」を理由にその行為が損害賠償責任を負う違法行為と判断される。

 筆者の知る限り、光や色の受忍限度をめぐって争われた訴訟はこのほかに、大阪地裁1996年3月20日判決が挙げられる。「正面に建つビルの外壁の反射光が、店内の商品を赤く照らし、営業に支障を来した」として、呉服店経営者がビル所有者を相手取り、壁面の遮光工事と400万円の損害賠償を求めた。大阪地裁は、反射光が「受忍限度を著しく超える」として原告の請求を認めた。

 色や光の害に関するトラブルはデリケートで難しい問題だ。建築設計者や施工者は、こうした判例で裁判所が「受忍限度」についてどのように判断しているか知っておくとよい。そのうえで、太陽光発電パネルの反射光などが周囲に限度を超える被害を与えそうだと予感した場合は、パネルの数を減らしたり、設置位置を変更したりする控えめの設計をすることが、後々のトラブル防止につながるだろう。

(野口 和俊=弁護士)

【初出:日経アーキテクチュア2014年5月10日号】


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