二審判決は「被害回避は容易」

 この判決を受けて新築住宅所有者は太陽光発電パネルを撤去。控訴もしなかった。しかし、タマホームは「反射光が通常の4000倍以上もまぶしいという隣家の住民の主張に、根拠はない」などと主張。一審判決の取り消しを求めて控訴した。

 東京高裁はまず、「太陽光発電パネルを設置する際は、隣接する住宅の居住者への配慮が求められる」と言及。そのうえで、「反射光の強度が、他の屋根材と比べてどの程度のものかが明らかでない」とした。

一審判決はパネルの撤去など隣家住民の請求を認めたが、二審判決は棄却した(資料:判決文などをもとに日経アーキテクチュアが作成)
一審判決はパネルの撤去など隣家住民の請求を認めたが、二審判決は棄却した(資料:判決文などをもとに日経アーキテクチュアが作成)

 太陽光発電パネルと陶器の瓦やスレート瓦といった他の屋根材を並べて約2mの距離から輝度計で測定したとき、太陽光発電パネルの輝度が最も低かったというタマホームの提出した証拠を引用。隣家の住民が「反射光の輝度は通常の4000倍以上」と主張するデータは、フィルム感度を加味した指標を示す、写真撮影用の露出計を用いており、太陽光発電パネルの発する光の物理量を測定するためのものではないと判断した。

 パネルの反射光が隣家の住民の建物に照射される時間についても、夏至日は0分、春分の日や秋分の日は2階部分で1~2時間、冬至日は1階部分で30分にすぎないとするタマホーム側が提出した証拠を認めた。「窓の位置や反射光の照射する範囲などを考慮すると、実質的に反射光が差し込んでいると評価できる時間はさらに短くなる」と判断した。

 このほか、カーテンを閉めるだけで反射光の透過を相当防げる点や、窓から差し込む反射光は直視しない限り継続的に被害を受けることはない点も指摘。反射光の被害は容易に回避できると述べた。こうしたパネルの反射光による被害は、受忍限度を超えるものとは直ちに認められないと結論付けた。