トリビア8:外から見えないガラス屋根

 ここからは東京ステーションホテルへ。

 トリビア8。ホテル最上階には、外から見えないガラス屋根の大空間がある。

 前編で「3階床より上は、辰野金吾による当初のデザインを忠実に復元した」と書いたが、それはドーム内と外壁の話で、ホテルは例外。ホテルでは、復元に際して、当初なかった屋根裏部屋を設けた。1つは3階の客室にメゾネットタイプを設けたこと。もう1つは、中央に宿泊者用のラウンジを設けたことだ。

東京ステーションホテルの宿泊者用ラウンジ(イラスト:宮沢洋)
東京ステーションホテルの宿泊者用ラウンジ(イラスト:宮沢洋)

 このラウンジ、東側の傾斜した天井が全面ガラス張りになっている。宿泊者は明るい朝の光のなか、ここで朝食を取る。レストランではなく宿泊者限定のラウンジなので、泊まらないと見ることができない。そう聞くと「一度は泊まってみたい」と思わずにはいられない魅力的な空間だ。

 屋根裏の生かし方にも感心するが、もっと感心するのは、文化庁がこんな大胆なデザイン変更を許可したこと。先にも触れたとおり、この建物は重要文化財。従来であれば、当初の外観を変えることはまかりならぬ、ということになりそうなところだ。それが、ここでは建物のど真ん中にある屋根をガラス張りにすることを許容した(念のため繰り返しておくと、屋根がガラス張りなのはホームに面した東側だけ)。

 JRのホームからこのガラス屋根が見えないだろうかと、いろいろ歩いてみたが、ホームからは見えなかった。それもあって、当初のイメージを変えていない、と判断されたのだろう。こういう規制緩和は大いに進めるべきだと思う。