トリビア5:柱は銀色ではなかった

 筆者は2012年10月に赤レンガ駅舎の復元が完成したとき、ドームにそびえ立つ8本の柱を見て、「辰野金吾って、なんて大胆な色彩センスだったんだ」と感動してしまった。だが、それは誤解だった。

 トリビア5。当初の柱は銀色ではなかった。

ドームを支える柱(イラスト:宮沢洋)
ドームを支える柱(イラスト:宮沢洋)

 前述のように、3階床より上は辰野金吾による当初のデザインを復元し、それより下は現代の機能に合わせて新たにデザインした。この柱は構造上、当初の柱よりも太くせざるを得ないため、明らかに後からデザインしたものと分かるように、あえて現代的なデザインにしたのだという。

 そもそも、元の柱が何色だったのか、当時のモノクロ写真からは、正確には分からないらしい。当時の駅舎を描写した文章などから類推すると、灰緑(灰色がかった薄い緑色)であった可能性が高いという。

 筆者の画力では銀色が伝わらない気がするので、実物の写真を見てみよう。写真があるなら最初から載せろ、という声が聞こえてきそうだが、そこは、想像をふくらませるためだったということで…。

 北ドームの柱はこんな感じだ。

実際の北ドーム内(写真:磯達雄)
実際の北ドーム内(写真:磯達雄)

 柱の上部には改修した年が刻印されている。

柱の上部(写真:日経アーキテクチュア)
柱の上部(写真:日経アーキテクチュア)

「西暦2012年」を「AD MMXII」 と表記しているのが、SFっぽい。過去の遺構に未来の異物が送り込まれたかのようだ。

 ちなみに、柱の上部は2階の回廊からよく見える。東京ステーションギャラリーに入館すると、帰りは2階回廊を通ることになるので、そこでじっくり見よう。南ドームの2階回廊は無料で入れるので、そちらで見てもよい。

 トリビア6以降は後編で紹介する。


書籍の表紙(イラスト:宮沢洋)
書籍の表紙(イラスト:宮沢洋)

 ここで少し宣伝。日経アーキテクチュアは12月8日に書籍「旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 東日本30選」「旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 西日本30選」を2冊同時発売した。書籍は旅行に携帯しやすいハンディサイズ(縦185mm×横148mm)で、価格はいずれも1400円+税。目次など詳細は下記をご覧いただきたい。

旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 東日本30選

旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 西日本30選

 また、この機に合わせて、両書の電子書籍を発売したほか、既刊の「巡礼シリーズ」も電子書籍化したので、興味を持った方はぜひお求めいただきたい。

旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 東日本30選(電子書籍)

旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 西日本30選(電子書籍)

菊竹清訓巡礼(電子書籍)

ポストモダン建築巡礼(電子書籍)

昭和モダン建築巡礼 東日本編(電子書籍)

昭和モダン建築巡礼 西日本編(電子書籍)