和様と禅宗様が並走

 慈照寺銀閣(銀閣寺、京都、西30選)の上層も禅宗様でつくられています。

慈照寺銀閣(イラスト:宮沢洋)
慈照寺銀閣(イラスト:宮沢洋)

 また詳細は不明ですが、龍安寺石庭(京都、西30選)も禅寺の庭園です。

 この禅宗様は禅宗寺院を中心にして広まったと思われますが、禅宗ではない寺院にも用いられながら、さらに従来の和様(わよう)(日本様とも言う)や大仏様とも混ざり合って、折衷様と呼ばれる建築も生み出すに至っています。折衷様としては観心寺金堂(大阪)や鶴林寺本堂(兵庫)が知られています。

 京都にもないわけではありませんが、鎌倉での禅宗の興隆のためか、関東周辺には優れた禅宗様の建築が何棟も残っています。正福寺地蔵堂(東京)、安楽寺八角三重塔(長野、東30選)、清白寺仏殿(山梨)などです。
 なお、中世に禅宗様が広まったとはいえ、従来の和様も発展的に受け継がれています。大報恩寺本堂(京都)や三十三間堂(京都、西30選)などが、この頃につくられた和様建築です。

 古代以来、日本では中国から輸入した建築様式を、徐々に日本的なものにつくり変え、和様の文化を築いてきました。そのようななかで禅宗様の導入は、その状況を一転し、和様とは別系統の建築を誕生させました。この二系統が並走する意識はその後何百年も続くことになります。

ここまで執筆:伏見唯(ふしみゆい)
1982年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、新建築社、早稲田大学大学院博士後期課程を経て、2014年伏見編集室設立。専門は日本建築史。

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 前編はひとまずここまで。後編はこちらに。

両書籍の表紙(イラスト:宮沢洋)
両書籍の表紙(イラスト:宮沢洋)

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