近年、3次元曲面を多用するなど、複雑な形状をした建物のファサードが増えている。背景には、高性能なコンピューターの普及と、その計算処理能力を生かした「コンピュテーショナルモデリング」の活用がある。

 コンピュテーショナルモデリングとは、元々は飛行機や船舶、自動車のような、複雑な機能が組み合わさったものを設計するために発達してきたモデリング手法だ。高度な数学的手法やプログラミング技術が用いられている。

 建築設計の分野でも、最近は3次元CADソフト「Rhinoceros(ライノセラス)」と、そのプラグインソフトである「Grasshopper(グラスホッパー)」など、複雑な形状処理を操作しやすくするソフトウェアが登場。いよいよ普及期に入りつつある。

 従来のCADが人間の作図作業を補助する機能にとどまるのに対し、コンピュテーショナルモデリングはコンピューターにしかできないような機能を積極的に取り込んでいる。その特徴として、次の3つを強調したい。

1.構造性能や環境性能などのシミュレーションとの有機的な連携
2.自由曲面や大規模架構などの複雑な幾何学形状の操作
3.形状最適化解析による性能の向上

 上手に活用することで、人力では膨大な時間を要する作業が瞬時にできるようになる。さらに、複雑な形状を構造強度や環境性能という面から裏付けることや、構成部材の形状やその組み合わせを簡易にするといったことも可能になる。

 以下では、コンピュテーショナルモデリングを生かした3つの具体例を紹介したい。