保険屋が見た「建築のプロ責任」
目次
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建築士事務所協会の責任:告示15号を業界の慣行として定着させる
保険屋が見た「建築のプロ責任」(98)
本シリーズを終了するにあたって、以前から気になっていた大切な話題をと考えた末に、今回は敢えて設計報酬の問題をとりあげた。読者の皆さんに長らく読んできていただいた感謝の念も含め、改めて告示15号を業界の慣行として定着させることを提案したい。
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建築業界の責任:「彰往考来」のこころに学ぶ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(97)
彰往考来。「しょうおうこうらい」とパソコンで変換をかけても、Wordは答えてもくれない。長年にわたる不勉強のつけなのだろうが、生まれて初めて出会った言葉である。孔子が編纂した「春秋」の注釈書「春秋左氏伝」の序に出ている言葉で、「過去を明らかにして未来を考える」という意味なのだそうである。
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日本人の責任:“Samurai” の魂を取り戻す
保険屋が見た「建築のプロ責任」(96)
朝の通勤電車が苦痛になってきた。つい先日の朝も「何をするんだ!この野郎!」と相手を振り返る事態となった。満員電車の中で、肘で背中をぐりぐりっと押されたのだ。スマホを操作するのに、筆者の背中が邪魔になったのだ。相手は無言で睨み返してきた。
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発注者の責任:白紙撤回でドブに捨てた設計費用の後始末
保険屋が見た「建築のプロ責任」(95)
「おもてなし五輪」が、遠来の客をもてなす準備の段階から大きくつまずいてしまった。7月17日に安倍晋三首相は新国立競技場について、「ゼロベースで計画を見直す」といつものはっきりとした口調で発表した。支払い済みのデザイン監修料13億円を含めて62億円とみられる費用はドブに捨てることになった。この後始末に…
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建築士の責任:免震偽装を見抜け!?
保険屋が見た「建築のプロ責任」(94)
東洋ゴム工業の免震偽装事件に関して「建築専門家は免震偽装を回避できなかったか」と題する記事がアップされていた。企業の犯罪を見抜く能力を持ち合わせる建築専門家など世の中に、まず存在しないであろう。それに、国のお墨付きの制度によってよしとされたものを、もう一度確認作業をしないと使えないというのは本末転倒…
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行政機関の責任:子供の声は騒音?戸別訪問して住民を説得する気概が必要
保険屋が見た「建築のプロ責任」(93)
新聞に「保育所うるさい!?」という大きな見出しが躍っていた。少なからずショックを受けた。日頃から、都市部における待機児童対策がままならないという報道に触れている。その上に、子供の声の問題を持ち込まれたのでは、行政機関もたまったものではないだろう。さらにショックなこともあった。都の担当者は子供たちのは…
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保険会社の責任:設備のリスクに大胆であれ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(92)
太陽光発電にブレーキがかかった。九州電力など大手電力5社が、買い取りを控えると言い出したのだ。太陽光発電は建賠保険とも決して無関係ではない。設備機器に関するトラブルが補償の対象になるかどうかでしばしば問題となる。
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つくり手の責任:「自分は大丈夫」が最大のリスク
保険屋が見た「建築のプロ責任」(91)
建賠保険を通した筆者の体験から言えば、ほとんどの事故は「まさか」どころか、起こるべくして起こっている。危機意識の差で対応も変わってくる。
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国の責任:自然の猛威「勝手読み」は許されない
保険屋が見た「建築のプロ責任」(90)
御嶽山の噴火後、多くの救助隊員が活躍した。しかし、国は2次災害の危険を冷静に考えるべきであった。建築設計者も例外ではない。危険を察知しながら建築主に伝えていなければ、専門家としての信義則が問われる。
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つくり手の責任:落ちない天井、横綱相撲で臨め
保険屋が見た「建築のプロ責任」(89)
屋内プールなどで天井の崩落事故が後を絶たない。間接的であっても地震が原因と見なされれば、保険は免責となる。安全への取り組みは、白鵬のごとく真っ向勝負の横綱相撲で応えてゆくしかなさそうだ。
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国の責任:守るべきは人命か資産価値か
保険屋が見た「建築のプロ責任」(88)
第2次安倍改造内閣が打ち出した政策は「経済最優先」。安全は二の次にされているようだ。広島市北部で発生した大規模な土砂災害でも、経済優先が影を落としていた。
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建設業界の責任:「品確法」など無用の世界に
保険屋が見た「建築のプロ責任」(87)
「公共工事の品質確保の促進に関する法律」というのがある。公共工事では発注者が受注者よりも圧倒的に強いはずだ。それでもなお発生する様々な出来事によって、品質が確保されてこなかったゆえの施策である。
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団塊世代の責任:「わしがやらねば、だれがやる」
保険屋が見た「建築のプロ責任」(86)
人手不足が深刻だ。解決策として賃金アップや若手の採用が挙げられるものの、簡単にはいかない。切り札はベテランの活用。「わしがやらねば、だれがやる」。97歳になってなお創作意欲を示した彫刻家の平櫛田中に、団塊の世代は学ばなければならない。
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開設者の責任:ひきょう者より嘘つきがまし
保険屋が見た「建築のプロ責任」(85)
建築士事務所の開設者は、建築設計・工事監理契約の締結に当たり、責任の及ぶ範囲を明確にしたうえで「私が全責任を持って業務を遂行いたします」と力強く宣言し、建築主を安心させることだ。どうせ、責任を取らされる立場にあるのだ。
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加入者の責任:建賠保険の「落とし穴」を理解する
保険屋が見た「建築のプロ責任」(84)
建賠保険の契約締結を努力義務として定めた改正建築士法が6月20日に成立した。しかし、トラブルの種があちこちに潜んでいる。内容を十分説明する機会のないまま、保険が独り歩きする事態になりかねないことを憂慮している。
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若者の責任:「基礎ができない」と笑われぬように
保険屋が見た「建築のプロ責任」(83)
建設現場だけでなく、さくらんぼ農園や石油コンビナートでもベテランの不在による問題が深刻になっている。ついに、笑点の大喜利でも、人手不足がお題となった。
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保険会社の責任:被告席に着いた教訓を生かせ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(82)
マンションの構造計算書偽造で、建て主が設計者と建築確認を下ろした静岡市を相手に約10億円の損害賠償を求めた控訴審判決があった。実はこの訴訟で、保険会社を被告席に置いた訴えも並行して争われていた。
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国の責任:「建築指導課」の看板を下ろせ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(81)
過去に建築士が処分された事例をみると、お上による弱い者いじめのような話が次から次へと出てくる。曲がりなりにも民主主義が根付いているはずの我が国において、「建築指導課」という看板も感心しない。
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建築士事務所の責任:建賠加入はリトマス試験紙だ
保険屋が見た「建築のプロ責任」(80)
毎年4月1日に、日本建築士事務所協会連合会(日事連)が扱う建賠保険の契約更新日を迎える。ところが、毎年700件以上の契約について、あらかじめお願いした締め切り期日までに書類の提出がない。
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設計者の責任:サルの出没は予見できたか
保険屋が見た「建築のプロ責任」(79)
「設計ミスをお認めになるのですか」。設計者は建賠保険の保険金の受け取りと引き換えに、保険会社からのこうした質問に首を縦に振らなければならない。その際、設計者が責任を受け入れるかどうか判断を下す際の分岐点となるのが、予見性の有無だ。