屋上に加え、南と西の壁面全体を太陽光発電パネルで覆った研究施設が、2012年4月に公開された。東京工業大学グリーンヒルズ1号館だ。電力を自給自足し、既存施設に比べてCO2排出量を61%減らせる見込みだ。

 東京都目黒区にある東京工業大学の大岡山キャンパスに、太陽光発電パネルを外皮にまとった研究棟が誕生した。鉄骨造で地下2階、地上7階建て、延べ面積9553.57m2の同施設を、同大学は4月に報道機関などに公開。建物で使用する電力を自給自足でき、同大学の既存の研究棟に比べてCO2排出量を61%削減できるとアピールした。

太陽光発電パネルに覆われた東京工業大学グリーれた東京工業大学グリーンヒルズ1号館の外観。南側より見る(写真:澤田 聖司)
太陽光発電パネルに覆われた東京工業大学グリーれた東京工業大学グリーンヒルズ1号館の外観。南側より見る(写真:澤田 聖司)

 約36億円を投じて建てた建物は、環境エネルギーイノベーション棟という名称も持つ。最先端の環境エネルギー技術を研究する施設だ。施設の建設事業を、「安全安心な低炭素社会に向けた東工大の挑戦」と位置付けた同大学は、09年にプロポーザルで選定した日本設計と共同で施設設計を進めてきた。大学側では環境・エネルギー関連の設備設計を伊原学研究室、意匠設計を塚本由晴研究室、構造設計を竹内徹研究室がそれぞれ担当。プロジェクトチームを組み、プロポーザルでの提案をベースにして、その内容を深化させていった。

 施設の最大の特徴は、出力が650kWの太陽光発電パネルの設置だ。鋼材のフレームを用いて南面と屋上面を太陽光発電パネルで覆い、「ソーラーエンベロープ」と名付けた。さらに、建物の西側壁面にもびっしりと太陽光発電パネルを配した。パネルの総数は4570枚。国内主要メーカーから多様なタイプのパネルを調達した。

 例えば、南面や屋上には、比較的発電効率が高い結晶型の太陽光発電パネルを配置。少しでも多くの発電量の確保を狙った。一方、南面に比べて日照時間が短くなる西面には、化合物系や薄膜シリコンハイブリッドといった比較的新しい太陽光発電パネルも設置。単結晶シリコンや多結晶シリコンのパネルに比べて発電効率が劣るものの、将来の開発余地を考慮して性能などを検証する。

研究棟の西面には化合物系など今後の技術開発に期待がかかる太陽光発電パネルを設置している(写真:澤田 聖司)
研究棟の西面には化合物系など今後の技術開発に期待がかかる太陽光発電パネルを設置している(写真:澤田 聖司)