温室効果ガスの削減が求められ、機械設備だけに頼らない空調が注目されている。自然風を取り入れて冷房負荷を低減するのが一例だ。自然風力換気窓は風速に応じて窓が開閉し、効率良い換気を可能にする

 自然風力換気窓はバランス式逆流防止窓とも呼ばれ、自然の風や温度差を利用し、効率良く安定した換気を行うことができる。風力に応じて窓がゆらゆらと開閉し、まるで建物が呼吸しているかのようだ。

 逆流を防止する仕組みを内蔵し、給気用と排気用に役割を分担できるため、外気と室内の空気を混合することなく換気できる。「一方向の風の流れを想定できるため換気回路のシミュレーションもしやすい」と、同換気窓の開発に携わった梓設計の塩原達郎氏(現・広報室長)。

(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)
(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)

 従来の機械換気を想定した高気密のサッシとは異なる発想を持つ。しかし「技術自体は、校倉造りのように伝統建築が呼吸する仕組みを発展させたもの」。三協立山アルミSTER事業部部長の藤村聡氏がこう言うように、機構自体は建物内部に風の抜け道をつくるシンプルなもの。無風やそよ風の状態で開くようサッシに重りが仕込まれており、給排気方向と逆の風が吹くと自然に閉じる。

(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)
(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)

 約20年前に国内で発案され、1990年代半ばから開発が進められている。当初は体育館や工場など大空間に使われていたが、近年は学校やオフィスビル、庁舎、駅舎、高層住宅など様々な施設に利用されている。

(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)
(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)

 外部のセンサーに反応し、気候条件に応じて自動開閉するタイプもあれば、使い手が自ら開閉を制御できるものもある。「国学院大学の校舎では、利用者が状況に応じて簡単に開閉できるよう工夫した」と日建設計設計部門設計室長の朝田志郎氏は説明する。

 施設用途や設置個所に応じて使い分けられている。網戸やブラインドと併用できるすべり出し窓や、高層ビルのような過酷な風環境下でも使える換気ユニットも開発されている。

(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)
(イラスト:たかぎ み江/ぽむ企画)

 「当社製品の場合、初期費用は一般的なサッシに比べると約2.5~3倍。しかし約14%の省エネ効果がある」と不二サッシ取締役常務執行役員技術本部長の土屋英久氏。空調機器
とのさらなる連動や、戸建て住宅向けの製品開発にも期待がかかる。