玄関を入って、まず目が向くのは、吹き抜けの天井の高さだ。約7mというから3層分に近い。最小限の間仕切りで、子世帯4人の生活空間をひと続きの天井の下に収めている。

 「大きな空間の懐で、家族が暮らす姿をイメージして、一つの吹き抜けの中に生活の場を配置した」と、設計者の五十嵐淳氏(五十嵐淳建築設計代表)は言う。開口部は最小限にとどめ、将来の変化が読めない外部ではなく、大きな内部空間で開放感を与えようとしている。

子世帯の吹き抜けを2階北側の通路から見下ろす。玄関からリビング、キッチンまで続く1階だけでなく、2階の部屋も、一つの大空間に収まっている。天井高は約7m。吹き抜けに筋交いが行き交う。柱や筋交いはすべて120mmの断面(写真:吉田 誠)
子世帯の吹き抜けを2階北側の通路から見下ろす。玄関からリビング、キッチンまで続く1階だけでなく、2階の部屋も、一つの大空間に収まっている。天井高は約7m。吹き抜けに筋交いが行き交う。柱や筋交いはすべて120mmの断面(写真:吉田 誠)

リビングから天井を見上げる。「建物の基本性能を高めて、内部の大空間の居住性を確保した」と設計者の五十嵐淳氏。活動拠点とする北海道で一般的なレベルの断熱性能を確保するため、サッシの周囲に発泡ウレタンを充てんし、確実にすき間を埋めるなど、北海道仕様の納まりを取り入れた(写真:吉田 誠)
リビングから天井を見上げる。「建物の基本性能を高めて、内部の大空間の居住性を確保した」と設計者の五十嵐淳氏。活動拠点とする北海道で一般的なレベルの断熱性能を確保するため、サッシの周囲に発泡ウレタンを充てんし、確実にすき間を埋めるなど、北海道仕様の納まりを取り入れた(写真:吉田 誠)

 この「湘南の家」は、北海道を拠点に活動する五十嵐氏にとって道外初の住宅だ。東西に長い台形プランの2世帯住宅。西側の親世帯の天井は高さ4.1mで、その屋上部分は子世帯のバルコニーになっている。

 大きな吹き抜けの子世帯に“景色”を与えているのが、幾重にも交差する筋交いだ。部材の断面は120mm角、長さは最大で6m以上ある。「この長い筋交いと、天井高をどう位置付ければ、4号建築物としてスムーズに確認申請を通せるかを考えた」。構造設計を手掛けた長谷川大輔氏(長谷川大輔構造計画代表)はそう語る。