小売りなどの商いの世界だけでなく、技術の開発者や施工者にとっても、リピーター客はうれしいものです。

 実際に工法や技術を使った顧客がその効果を実感し、別の案件で「また頼みたい」と指定してきたら、技術者冥利に尽きるというものでしょう。ましてや、その技術を気に入ってくれた顧客が別の顧客を紹介してくれたりして、評判が口コミで伝わり、受注につながるとなればもう言うことありません。

 日経コンストラクション4月25日号の特集「土木工法2008●ヒット工法の秘密」で紹介した技術のなかには、まさにそのような「勝者の方程式」を体現する工法や技術があります。

 鹿島道路など4社が共同開発した「エコロックパイル工法」もその一つ。小口径羽根付き鋼管杭で基礎を築く工法です。2007年度の施工実績は約700件に上ります。同工法はリピーターが多いのが鹿島道路のひそかな自慢。特に民間工事では、過去に使ったことのある発注者や元請け建設会社、建築設計事務所などが再び指定することが多いそうです。

 大昌建設(千葉県長生村)など2社が共同開発した「高所法面掘削機による掘削工法」は、2007年度の施工実績が約200件。リピーターや顧客間の口コミもあってヒットしています。

 リピーターが多い理由や評判が口コミで伝わる訳については、特集記事をお読み下さい。究極の選ばれ方は、同じ顧客からその技術が再び指定されるだけでなく、前の工事を担当した技術者が再び指名されることなのでしょう。

 以前、準大手建設会社の施工部門の幹部が、大勢の社員を前に活を入れていた場面を思い出します。だいぶ昔の話なので記憶があやふやな面もありますが、確かこんなことを話していました。

 工事が完成し、顧客からまた頼みたいと思われるような仕事をするのが当たり前。それが最低限の仕事だ。安値受注だとか工期が短いなどと言い訳が通じるのは仲間内だけ。工事が終われば、造ったものはずっとそこにあり、われわれは造ったものでしか評価されない。だから品質を高めろーー。

 いまどきはやらない精神論だと思いつつも、心に響きました。もちろん、個々の頑張りに頼ることには限界があり、リスクもあります。まず、システムとしていかに機能させるかを考えることが不可欠ですが、最終的な品質は個々の頑張りに左右されることも否定できません。工事だけでなく、設計の仕事だってそうでしょう。雑誌づくりも同じです。

 日経コンストラクションはお陰さまでリピーターの読者の方が極めて多い雑誌です。購読契約を更新していただいている方々に改めて御礼を申し上げます。土木実務者の方々と同じように時間に追われる毎日ですが、引き続き土木実務者の方々が必要とする情報をタイミングよくお伝えすることに努めていきますので、これからも日経コンストラクションをどうぞよろしくお願いします。