国会で審議中の道路特定財源の扱いをめぐって社会が揺れています。現状の特定財源を維持するのか、一般財源化するのか。暫定税率を維持するのか、廃止するのか。日経コンストラクションはウェブサイト上で、この問題への緊急意識調査を実施しました。その結果を日経コンストラクション3月14日号の「NEWS焦点」やケンプラッツに掲載しています。

 調査の実施前から予想されたことではありますが、道路とかかわりの深い土木関係者とそうでない非土木関係者とでは、回答の傾向が明らかに違っていました。一般財源化の是非に関する設問で、「すべてを一般財源化すべきだ」と回答した割合は、土木関係者が25%だったのに対して、非土木関係者は55%で過半数を占めました。「一般財源化すべきではない」と回答した割合は、土木が48%だったのに対し、非土木は23%にとどまりました。

 同様に暫定税率の是非に関する設問でも、「維持すべきだ」と答えた割合は土木関係者で高く(44%)、非土木関係者では「廃止すべきだ」との回答が多数(47%)を占めました。土木関係者の方が非土木関係者よりも現状維持を望む人が多いことがわかります。

 ただし、土木関係者が道路特定財源の見直しを望んでいないわけでもありません。一般財源化の是非に関する設問では、特定財源の「すべて」または「一部」を「一般財源化すべきだ」と回答した土木関係者の割合は合わせて52%に上りました。同様に暫定税率の是非に関する設問でも、「税率を少し下げるべきだ」または「廃止すべきだ」と回答した土木関係者の割合は合わせて54%を占めました。

 つまり、土木関係者の約半数が現状を見直すべきだと考えているのです。道路特定財源に対する意見の相違は、土木対非土木のあいだだけでなく、土木関係者の内部でも生じていました。土木関係者の揺れる心が伝わってきます。

 前置きがだいぶ長くなりましたが、そうした道路特定財源をめぐる論戦の渦中で、地方は疲弊の色を濃くしています。その実態を探り、再生への道筋を展望したのが日経コンストラクション3月14日号の特集「地方が壊れる」です。

 これまで道路特定財源が維持されてきたにもかかわらず、自治体の財政はすでに火の車。地方はのっぴきならない状況に追い込まれています。相当額を投資して整備したインフラが財政難で機能停止を余儀なくされ、予算措置ができないために災害対策が先送りされ、実際の災害時に効力を発揮できない……。

 すでに各地で従来型の公共事業は行き詰まっているのです。道路特定財源が仮に現状のまま維持されたとしても、このままでは地方が壊れてしまう。従来型の公共事業を続けるだけでは、将来にツケを残すことになりかねません。財源の問題もさることながら、公共事業のあり方を見直さなければ地方を救うことはできないのです。

 日本政策投資銀行地域振興部の藻谷浩介参事役は、2007年3月に財政再建団体となった北海道夕張市の破綻の原因はまちづくりの失敗にあると指摘しています。夕張市は廃鉱後の集落に観光施設などを次々と建設し、人口が激減した後も分散した広い市街地を維持していました。インフラが広範囲に分散すれば、維持管理や更新の効率が悪くなり、財政を圧迫するのは当然です。

 地方の窮状は、経営難に陥った建設会社の様相に似ています。財務が悪化した状態で野放図に戦線の維持・拡大を図れば、破綻する恐れが高くなります。地方の再建策も建設会社と同様です。互いにメリットが得られる外部との連携で資金不足に対処しつつ、選択と集中によって投資対象を絞り込んで事業を効率化する必要があります。

 地方の再生に向けて注目される方策の一つが、コンパクトシティーの推進です。富山市では、このまま市街地が拡散すると、道路や公園、下水道などの整備に今後20年間で177億円も余計にかかり、維持管理費も年間で7%増えると試算しています。これを防ぐために都市機能を集約するコンパクトシティーを推進し、その一環で次世代路面電車(LRT)の富山ライトレールを開業しました。

 財源不足を補う取り組みも各地で始まっています。詳しくは特集記事をお読みください。地方の再生には企業経営の発想が不可欠のようです。

 日経コンストラクション3月14日号ではこのほか、「NEWS焦点」欄で鋼材急騰による現場への影響を取材しました。また、設計や施工のあり方を変える可能性のあるコンクリート標準示方書の改定の中身を詳しく解説しています。「その後の土木」欄では、地下水噴出などのトラブルで工事が中断していた紀の川大橋拡幅工事が再開するまでの経緯を、事故の原因や再発防止策を明らかにしながらつぶさに追いました。トピックス欄では、2007年8月に崩落した米国ミネソタ州の橋の架け替え工事で、最高額で最長工期のJVが落札した入札結果を詳報しています。日経コンストラクションは、土木の現在を映し、将来を見通すための情報の提供に、これからも力を注いでいきます。