かつてなく激しい受注競争が,土木のものづくりを根底から揺さぶっています。その行き着く先はどこなのか。荒波が高すぎて視界不良。だからといって手をこまねいていると,荒波にのまれてしまう。護送船団は解体しました。それぞれが自分の力を見定めて,道なき道を切り開いていくしかありません。もはや背水の陣どころではなく,荒波の中で活路を見いださなければならない切羽詰った状況に追い込まれています。

 日経コンストラクション9月14日号の特集「建設会社・コンサルタント決算ランキング2007」では,主要な建設会社と建設コンサルタント会社の2006年度決算を総覧しながら,各社がどのようにして荒波を乗り越えようとしているかをアンケート調査や幹部への取材を通して探りました。多くの会社が志向しているのは,得意分野への注力です。競争力を高めるために取り組んでいることとして,実に建設会社237社の77%が,建設コンサルタント会社153社の83%が,得意分野への注力を挙げています。

 戦線の維持・拡大をあきらめ,勝つ確率の高い分野に戦力を集中して激戦を突破する戦略です。各社が得意分野への注力に本気で取り組めば,もしかすると戦う相手は減るかもしれませんが,それぞれが負けられない戦いとなり,一段とシビアな競争が展開される可能性があります。大手もうかうかできません。局地戦ではその分野が得意な会社と競うことになるのです。こうした動きが強まることによって業界の秩序が徐々に変わっていき,会社間の新たな“すみわけ”が生まれるのではないかと思います。もちろん,日経コンストラクションでは今後の動きを注視していきます。

 日経コンストラクション9月14日号ではこのほか,前号で速報した米国ミネアポリス市の落橋事故の続報を「NEWS海外」に掲載しています。驚くべきことに,問題の橋は2004年の詳細な調査によって,1カ所でも破断すると橋全体の崩落につながる恐れのあるトラス部材があると警告を受けていました。「NEWS時事」では,秋田県由利本荘市にある本荘大橋のトラスの斜材が国土交通省の点検中に破断した事故を速報しています。三重県にある木曽川大橋のトラス斜材破断事故(日経コンストラクション7月27日号で詳報)を受けて,国交省が点検した25の鋼橋のうち11橋で鋼材にさびなどが見つかっています。いずれも,詳しくは今号の記事をお読みください。これらの問題は今後とも追いかけていきます。

 「その後の土木」欄では,完成検査で合格した後に床版高の施工ミスが見つかった石積高架橋(宮城県富谷町)の瑕疵修補工事を取り上げています。橋の安全性を照査したうえで,桁端部などの部分的な手直しで済ませた経緯をつぶさにリポートしました。トピックス欄では,3年前の新潟県中越地震の教訓がこの7月の新潟県中越沖地震の被害軽減につながったのかどうかを検証しています。日経コンストラクションではこのように,土木の世界の新しい出来事やトレンドをいち早くキャッチして速報するだけでなく,その後の状況や実際の効果などを検証して,土木実務者の方々が不透明な時代を生き抜くために役立つ情報を提供していきたいと考えています。