調査結果を初めて見たときは,そのあまりの率直さに驚きました。表題にあるように,土木工事の発注者の7割が「低入札で落札された業務や工事は手間が増えるので迷惑だ」と回答していたのです。厳密に言えば,五つの選択肢から発注者の25%が「迷惑だ」と回答し,同じく48%が「どちらかと言えば迷惑だ」と答えていました。

 上記の調査項目と同様に「どちらかと言えばそう思う」との回答を含めて集計すると,「工種や難易度によっては建設会社や橋梁・水門メーカーなどに設計を任せたい」が88%,「たび重なる入札・契約制度改革についていけない」が47%。これ以上にない発注者の本音が開陳されているように思います。

 これらは,日経コンストラクションが発注機関に勤める読者に対して実施した意識調査結果のほんの一例です。詳細は8月10日号の特集「発注者の本音」に掲載しています。入札・契約制度のほかに,官民の関係や自らの技術力,仕事のやりがい,将来像などについてどう思うかを尋ねました。理想と現実のギャップに戸惑いつつ設計や施工に距離を置き,計画やマネジメントにシフトしていこうとしている発注者の姿が浮き彫りになっています。これから発注者が果たすべき役割を考える際には,このような発注者の意識を念頭に置いて発注者の役割を見直していく必要があると思います。

 日経コンストラクション8月10日号ではこのほか,建設産業従事者の労働時間調査に基づいて35~49歳の中堅クラスの負荷が高まっている実態をリポートしています。団塊世代の退職や若手の減少による人材不足は深刻です。うつ病などの精神障害を訴える技術者も増えてきました。早急に手を打つ必要があります。

 「勝つ提案」では,国土交通省四国地方整備局発注の西谷高架橋工事を取り上げました。いわゆる加算方式による総合評価落札方式の一般競争入札で,三井住友建設が2割(2億円)の価格差を逆転して落札した経緯を詳述しています。

 今号の「ズームアップ」は2本。うち1本は,建設ラッシュに沸くアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの道路工事にスポットを当てました。以前に日経コンストラクション編集部に在籍し,現在は日経アーキテクチュア編集部で活躍する浅野記者が,大成建設の担当するインターチェンジ建設工事をリポートしています。日経アーキテクチュア7月23日号のドバイ特集をご覧になった方は,ビル建設ラッシュのすさまじさに驚かれたことと思いますが,大成建設が人海戦術で進める土木工事も圧巻です。今号の表紙の写真からも,そのすさまじさが伝わってくると思います。