国や自治体などが打ち出した低入札対策によって極端な安値受注が減少する一方で,低入札の多発を反映して予定価格は下落するーー。

 日経コンストラクション6月8日号の特集「効き始めた低入札対策」では,発注者の施策の観点から低入札問題を追いました。見えてきたのは,過当競争激化の構図です。落札価格の上限値が低下し,下限値が引き上げられることによって落札できる価格の幅が狭まり,従来よりも狭い価格帯で受注競争が繰り広げられる様相を呈しています。

 国土交通省が導入した特別重点調査は,最低制限価格と同等の効果を持つことがわかりました。同省が2007年1月30日から3月31日までに特別重点調査を実施した入札は63件ありましたが,特別重点調査の対象となった入札参加者とは全く契約をしていません。失格基準価格を引き上げる自治体も出てきています。極端な低入札が排除されることは,その点では当然の結果ですし,予想の範囲内だといえます。

 予定価格の下落も予想できたこととはいえ,その現実を突き付けられるとショックを隠せない人が多いのではないでしょうか。建設コンサルタント会社や建設会社に勤める実務者から「予定価格が下がっているような気がする」といった声は聞いていましたが,「低入札は異常値だから,予定価格の根拠となる実績の調査からは外されるのではないか」と期待していた人も多いはずです。この点を国土交通省に確認しました。

 大臣官房技術調査課長の前川秀和氏は,「予定価格は,実績を調査した数字に基づいている。低入札で受注したからといって,歩掛かり調査や労務費調査から外すことはない」と言明しました。予定価格はそもそも下がり続ける構造にあり,低入札は下落の速度を一段と加速すると指摘しています。詳しくは特集記事をお読み下さい。今後の受注競争に与える影響は小さくないと思います。

 日経コンストラクション6月8日号ではこのほか,「NEWS焦点」欄で暴力団関係者による公共工事への不当介入の問題を取り上げました。長崎市長銃撃事件に便乗した脅迫も相次いでおり,対策の強化が急務となっています。

 「その後の土木」欄では,3月25日の能登半島地震によって被災した能登有料道路が,1カ月間で全線仮復旧するまでのプロセスを追いました。現場での即断や応援職員との連携によってゴールデンウイーク前の全線仮復旧を実現するまでの,土木実務者の奮闘を描いています。