構造設計事務所に勤める構造技術者の平均年収は約780万円――。日本建築構造技術者協会の会員356人(平均50歳台半ば)から得たアンケート結果をもとに、構造設計事務所・建築設計事務所・建設会社に勤める構造技術者の報酬や勤務状況、業務環境改善に対する期待などが、日経アーキテクチュア2月27日号にまとめられています。

例えば年収を見てみると、勤務先の会社の規模に比例して、ばらつきが大きいことがわかりました。「1~5人」の組織の平均年収は600万円台(経営者を除くと400万円台)と、「1000人以上」の組織に比べて300万円ほど低くなっていました。「小規模事務所の財政は火の車。仕事の受注もままならず、継続的に受注するために、建築主や元請け事務所の要求に屈従せざるを得ない」(60代)との切実な声も聞かれました。構造計算書偽造事件と同じ構図です。

また、構造設計事務所勤務者の27%が、1日の労働時間を11時間以上と回答しました(平均労働時間は9.5時間)。この数字は、建築設計事務所の20%、建設会社の17%より多くなっています。

構造技術者の報酬の低さや長時間労働は不十分な現場監理につながり、品質確保にも深刻な影響を及ぼします。さらに、「耐震技術が進歩し、構造計算が複雑化するなかで、意匠設計者の下請けに追いやられ、長時間勤務と低所得に甘んじ、実務者が減少していった」(60代)実情もあります。

こうした現状に対して多くの技術者が挙げているのが「建築士法の改正と構造設計業務の分離」です。構造設計業務の分離は報酬だけでなく、構造技術者の地位向上への足がかりになるはずです。今回の事件を機に存在がクローズアップされた構造技術者。世間の理解を得るためにも、踏ん張りどころを迎えています。

それでは、日経アーキテクチュア2月27日号をご覧ください。日経アーキテクチュアの年間購読予約は、下記のリンクから申し込むことができます。なお、本誌へのご意見、ご要望も下記のリンクからお願いいたします。

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